森薫先生の『乙嫁語り』は連載開始が2008年で単行本第1巻が2009年10月、ということで
マンガ大賞では2010から対象になり、2010と2012はノミネートに至らないものの1次選考最上位、
2011と2013では本戦にノミネートされどちらも2位、と惜しい順位でしたが、
2014でノミネート3回目にしてついに大賞に選ばれました。
森薫先生、おめでとうございます!
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『乙嫁語り』マンガ大賞3度目のノミネート/サイン会での人気投票結果↓
(本日の記事)
マンガ大賞2014公式サイトマンガ大賞2014は森薫「乙嫁語り」に決定(コミックナタリー)
マンガ大賞2014 : 「乙嫁語り」が大賞受賞 “三度目の正直”で(まんたんウェブ)
「乙嫁」森薫が80歳まで現役宣言、マンガ大賞2014授賞式そして、つい先日まで
フランスに行っていた森薫先生が登壇。
マンガ大賞 公式Ustreamアーカイブでその様子が見られます。
ただ森さんは顔出しNGなので声のみの登場ですが。
以下、授賞式の内容要約、そのあと個人的な補足を。
なお、すべての内容を記述している訳ではないのであしからず。
森さんに贈呈されたマンガ大賞選考委員お手製のプライズ(写真)
壇上ではまず、過去に『3月のライオン』でマンガ大賞を受賞した
羽海野チカ先生からお祝いのコメントが届いており
司会の吉田アナが代読。
羽海野先生はアミルさんが好きで、前作『エマ』のエマが走り出すシーンも好きとのこと。
エマは単行本第5巻三十五話「ハワーズ来訪」かな?
ここでふと森さんが「羽海野チカさんは高校の先輩」と明かしてビックリ。
ここから森さんに質問タイム。
Q、『乙嫁語り』をスタートしたきっかけは?
A、前からこの地域に興味があり、前作『エマ』を描き終えて次の作品は
まず舞台を変えたほうが読者も楽しめるんじゃないかと思ったのが一つ。
次に、掲載誌が(新たに創刊される)隔月刊で、作画に2ヶ月かけられるというのが大きかった。
Q、中央アジアについて関連資料を探すのは大変では?
A、確かに日本語で出ている関連資料は少ないが、まだ本になっていない研究者の方の論文を
ネットで閲覧したり、本も手軽に取り寄せできるので、ネットには助けられている。
実は現地に行ったことがない。今なら多少知識も得たので色々得られるとは思うが、
やはりスケジュールが……
Q、この作品で中央アジアに興味を持った方へのオススメの研究者などいますか。
A、(この時には失念して名前が出ませんでしたが、あとで森さんから補足があり、
加藤九祚さんを挙げられていました)
シルクロードの古代都市――アムダリヤ遺跡の旅 (岩波新書)加藤 九祚
Q、色々な漫画家さんの所に武者修行に行っていると聞きましたが。
A、はい、谷口ジローさん、あだち充さん……最近だと前川たけしさんなどの所に伺いました。
諸先輩に負けずに私も80歳までちゃんと売上を出せる作品を描いていきたい。
Q、作中の絨毯や刺繍の質感に惹かれますが、実物が手元にあって参考にしているのでしょうか?
A、実物は持っておらず、基本的にまず博物館等でよく見学し、
さらに作画の際は手元で写真集等を参考にする。
Q、中央アジアに興味を持ったきっかけは?
A、昔から本を読むのが好きで、旅行記や他の地域の暮らしを知るのに惹かれていった。
そしてとある中央アジアの展示会が素晴らしく、今でもその時の目録は参考資料にしている。
Q、なかなか難しいとは思うが、映像化の話は来ていますか?
A、今のところ聞いていない。自分の中で特にアニメや実写化したいという気持ちはないが、
来たらその時に考える。
ここで
受賞記念イラストの紹介。
森さん
「こういう説明を兼ねたイラストは前から描きたかったが、
単行本あとがきスペース等ではスペースが足りず機会が無かった。
そんな時今回の記念イラストの話をいただき、この機会に描かせてもらった」
そしてマスメディア用贈呈シーンとして森薫担当の大場渉・ハルタ編集長が登壇し、
前年度受賞の『海街diary』担当編集さんからプライズの贈呈。
ここから大場さんへの質問タイム。
Q、『乙嫁語り』をスタートした経緯は?
A、前作『エマ』が終わった時、編集部から
「今度はもっと露出度の高いのを描いてよ!」と依頼したら
森さんが「はい、分かりました!」といって、『乙嫁語り』が始まった。
しかしどちらかと言えば今作品は民族衣装等の厚着が多いのに、と突っ込んだら
「何言ってるんですか、
厚着してるのを脱がすのがいいんじゃないですか!!」
と言い返された。
Q、初めての原稿を読んだ時、どう思ったか?
A、丸々2ヶ月かけて第一話描かれた時は
「これは連載で続けていくのは難しいかな」と思ったが、
それから森さんの描くスピードが格段に早くなった。
そのおかげでこれまで(掲載誌で)落とさずやってこれた。
Q、大場さんは編集としてこれまでにいろんな作品・作家と接してきたと思うが、
『乙嫁語り』&森さんはかなり異質では?
A、最近の「アニメ好きなオタク」「マンガ好きなオタク」というよりは
80年代・90年代の「凄く物事に詳しいオタク」というか「荒俣弘的なオタク」というか、
好奇心・取材力・掘り下げる力が凄いと思う。
Q、森さんから編集になにか資料集めを頼まれたりしたことは?
A、ほとんどない。森さん担当編集の仕事としては、描き込み型の作家さんは
放っておくとキャラクターがどんどん濃くなる場合があるので、
もう少し薄くマイルドに、とお願いするくらい。
Q、さきほど森さんから「80歳くらいまで描きたい」と仰ってましたが。
A、出版社としては「どの作品をどのくらい描いて欲しい」とはお願いしていないが、
森さんは『乙嫁語り』に関しては現在
単行本で12~13巻くらいまでの構想があるとのこと。
Q、作品タイトルの「乙嫁」という言葉について。
A、(ここで森さんが大場さんの代わりに回答)
タイトルを考えた時、お嫁さんの話なのでまず「嫁」という言葉は入れたかった。
そして調べている辞書が古かったせいで古語の「乙嫁」という言葉が載っていた。
その辞書には「若いお嫁さん」という意味しか載っておらず、やや範囲が狭いかと思ったが、
そのあと国会図書館で古い辞書片っ端から調べたら、「きれいなお嫁さん」等、
もう少し幅が広い言葉だと分かり採用。
Q、まだ単行本にはなっていない連載の最新話がかなり脱いでいますが、
やはり描きたかったんでしょうか?
A、(ここも森さんが回答)はい、もちろん!ただし、
裸は描き過ぎると安くなるので、よく溜めてから!あと、6巻で殺伐とした話が続いたので、ここらで明るくエロい話を、と思って
心置きなく脱がしております!
(個人的雑感)
*まず森さんが羽海野チカ先生の高校の後輩というのが一番の驚き。
直接会った事は無いとのことで、ここは白泉社かKADOKAWA、
もしくは両方にツテのある企画屋さん、腕の見せ所ですよ。
*「現状、単行本12~13巻くらいまで構想がある」というのも新情報。
乙嫁が何人まで出るか、既出のキャラたちはどこまで掘り下げられるか、
そして『エマ』の時にも当初は2~4巻くらいのつもりだったのが
最終的に10巻まで行ったことを考えると……
さぁ何巻まで行くでしょう?
*「尊敬する漫画家さんの所でアシスタントさせてもらう」シリーズ、
谷口ジロー先生やあだち充先生は以前名前が挙がってましたが、前川たけし先生は初めてかも。
*前年度大賞の『海街diary』と今回大賞の『乙嫁語り』にはある共通点が。
それは2011年の
第15回手塚治虫文化賞にノミネートされていながら
両作品とも辞退していること。
*森さんのインタビューは時々企画されますが、
担当大場さんへのインタビューというかコメントはある意味貴重。
そういえばツイッターでは「大場さんのスーツ姿が貴重」という声もあったっけw
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